犬の胆嚢粘液嚢腫 黄疸 内科療法?手術?
かれこれ、20数年。
先代の犬からおつきあいのある、古くからの患者さん。
お互いに信頼関係もあり、先代の犬も、今回の子も、その次に飼った子も。
何だかんだ、手術したり薬飲んだりで。
みんな健康で、何もしないでも済めば一番いいのですが、重なるときは重なります。
そんな、MさんちのトイプードルのLちゃん、12歳。
以前から、胆嚢に若干の問題があり内服を継続。
ただ、このところ調子が良く検査でも正常値に安定していたので、投薬も休止して様子を見ていました。
(そのほかにも病気があるので、そちらの治療は継続)
そこに、数年前から患っていた、片目の成熟白内障。
アレルギー性皮膚炎があると、どうも白内障になりやすい傾向にあります。
それまでも予防的な点眼は行ってはいたのですが、突然ぶどう膜炎(眼内部の炎症)になり眼圧上昇。
眼圧を下げる点眼が必要なのは当たり前ですが、炎症を取り除いてあげないと病態は良化しません。
そこで、セオリーどおりステロイドの内服を開始。
無事に効果も出始めて、良かった良かったと思いきや。
ある朝電話が・・・「先生、Lちゃんおしっこオレンジだよ!!食欲もない」
第一声を聞いた私も、この時点で飼い主さんも声を揃えて。
「それ、黄疸です」「そうだよね!どうしたらいい?」
「どうしたらいい?って、すぐに来て下さい。入院ですし手術かもしれません」
その後すぐ来院した、Lちゃんを診察し検査もすると、立派に黄疸。
実は、Lちゃん高齢になってきてから、脂質代謝異常もでてきたので投薬しようか?なんて相談していたところ。
重なるときは全てがリンクして重なります
エコー検査では、胆嚢が大きく膨れ、内部の胆汁は流動性を失い固まってしまってます。
胆嚢粘液嚢腫状態。(肋間からみているので、わかりずらくてすいません)

それに加えて、固まった胆汁が総胆管などに閉塞しておこる、閉塞性黄疸が併発しています。
もちろん胆嚢炎も、胆嚢の周囲が白くなっています。
Lちゃんの状態もあまり良くないし、これは早々に手術かな?なんて考えていると。
血液検査の結果が手元に来ました。
ALP >2000 ALT 3997 AST 1386 T-Bil 4.5 もう典型的な数字。
そして、肝心の血液凝固検査。
胆汁の閉塞が起きると、脂肪の消化が妨げられ、脂溶性ビタミンであるビタミンK欠乏症が起きることがあります。
もちろんひどい炎症があっても異常を示すことがありますが、
そのビタミンK欠乏症によって引き起こされるのが、血液凝固異常(出血が止まりにくい状態)
もれなく、今回のLちゃんにも起きており。
ダメなら輸血すればいいのでしょうが、それもなかなか大変なこと。
すぐに手術に踏み切るのはちょっと腰が引けます。
幸い、状態はもちろん悪いものの、もう少し頑張れそうなので、
まずは入院して徹底的な内科療法に努めることで飼い主さんとも意見が一致。
さあ!治療開始です!!!
炎症を止めて、ビタミンK、抗生物質、吐き気も止めて。
もちろん点滴。
注射薬だけでは足りないので、食欲ないけど内服薬も併用。
一時、ビリルビン(黄疸)の数値はさらに上昇、悩ましい時間を過ごしましたが。
入院後、4日目。
状態も血液検査数値もグッと改善!!詰まっていたものがとれたのでしょう!
胆嚢も胆泥状態はあるものの小さくなり、流動性も確認できます。

そしてこの日を境に、黄疸は徐々に消え。
それでも、少し残るようなら血液凝固系の改善を待って手術(胆嚢切除)かな?
なんて飼い主さんとも話してたのですが。
回復は予想以上!!!!
すっかり元通り。
これなら、無理に今手術しなくても経過観察でいけそうです。
しばらくやっていなかった、胆嚢切除。
自分のノートを見返したり、イメージトレーニングもバッチリしたのですが・・・
意外と手術侵襲が強いようなイメージがあります、やらないで済むほうが犬にとってはいいに決まっています。
尿道や尿管が詰まる話は、このブログで嫌ってほど書いていますが、
総胆管も詰まります。
詰まった、出が悪い、漏れる・・・なんだか水道屋さんみたいです。