犬のレプトスピラ感染症とSFTS(重症熱性血小板減少症候群)について
まずは、先月もお伝えした、レプトスピラ感染症に関してです。
県内での発症報告があってから、飼い主さんからも色々と質問がありました。
私の見解と、今後のワクチン接種について書こうと思います。
レプトスピラ感染症は、保菌しているげっ歯類(ネズミなど)や野生動物の排泄物中に細菌が混ざり、
それにより汚染された土や水を介して、家畜やペットに感染します。
それは、人にも感染します。
詳しい疫学は、調べてみてください。
この感染症は、1年中感染するリスクはあるものの、特に9月~11月の秋に感染リスクが高まります。
それは、気温により細菌の増殖に差が出るからです。
それが証拠に人では、昔から「秋病み」と呼ばれています。
なので、実際にきちんと免疫を獲得し秋に向けて対策しようとすれば、
6月~7月にレプトスピラのワクチンを接種することがベストです。(厳密に言えば初年度は2回接種)
レプトスピラのワクチンによる抗体は、どんなに保っても1年と言われています。
混合ワクチンという形で接種してももちろんいいですが、
7種だ10種だとなると、それだけ含まれるタンパクの量も多くなるので副反応が出やすくなることもあります。
今まで平気な子は、それでもいいかもしれませんが。
レプトスピラ単体のワクチン(2種もしくは4種)を接種するのもいいと思います。
そして、混合ワクチンは5種にして、いつもの時期に接種。
(これに関しても何年おきにとか色々言われています、それはまた診察の時にでも聞いてください)
ただし、レプトスピラって実はものすごく沢山の「型」が存在するのです。
しかし、届け出をしないといけないのは数種類。
日本で手に入るワクチンは多くて4種(4つの型に対応)。
しかも、ワクチン全てに言えますが、100%防げるわけではありません。
その辺りは、ご理解してください。
とは言え、過剰に怖がることも違うかなと思います。
人によっては、「海岸に行くと感染症が流行ってるから、海に散歩に行けない」なんて考えているようです。
ちなみに私は、未だレプトスピラと診断した症例を経験していません。
ただし、昔より聞こえるようになったのも事実、しかも市中で感染していることも事実。
逆に、ワクチンを接種することで起こるリスクがあることも事実。
最終的には、飼い主さん自身が決めていただくしかありません。
迷った時には、お気軽に質問してください。
なお、犬から人へのレプトスピラ感染は、通常の消毒管理で十分防げる可能性が高いので、安心してください。
これを機会に普段から、ペットの糞や尿、嘔吐物などの取り扱いに関して、少し気をつけるようにしてみてはどうでしょう。
もう一つは、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)について。
数年前この病気が公にされた時に、ブログに書いた記憶があります。(2017年)
元々は、ダニから人へ感染するものとされていましたが、感染した猫や犬から人へ伝播した例が見つかっています。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2467-related-articles/related-articles-473/8987-473r05.html
詳しくはリンクをご覧ください。
当時は、西日本を中心にでしたが、
近々の情報では、静岡県で動物から人への感染が疑われる例がみとめられているようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000750412.pdf
静岡県獣医師会では、アナウンスをしています。
http://www.shizujyu.com/publics/index/356/
この病気に関しても、神奈川県内では未だ聞こえてきませんが。
「箱根の山を越えるのも時間の問題なのでは」と個人的に少し心配しています。
ダニに関してしっかりと駆除することも、完璧とは言えませんが重要となってきます。
私としては、液体の滴下タイプのものよりは、経口投与タイプのものの方がより確実と考えています。
(これに関しても、獣医師も飼い主さんも個人の考え方があるのでそれはそれで)
山の中へキャンプに行くなど、犬も連れていけたら楽しそうですよね。
でも、こんな病気も存在することは覚えておいてください。
猫を飼育の方、外へ出なければノミもダニも基本つきません。
室内飼育を心がけてください。
野良猫を扱っている、ボランティアの皆さん。
この病気の情報は既にご存知かと思いますが、今一度動物の取扱には気をつけてください。
入ってきてからでは遅いです、今の内からやっておかないと身につきません。
我々も、感染のリスクがありますので、十分気をつけます。
厚生労働省のQ&Aリンクも貼っておきます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
我々がタイムリーに向き合っている、新型コロナウイルスがまさにそうですが、
見えないウイルスや細菌により伝播する感染症という病気。
今後も色々と出てくるのでしょうが、その時に何がベストなのかを見極めていくしかないと考えています。
そうじゃなくても、病気で困ってる子たちがいるのに、そのうえ感染症となれば・・・
広がらないことを祈るしかないのでしょうか。
今年も、いろいろなことがありました。
治療で助かった子もいれば、残念ながら亡くなってしまった子たちもいます。
新しく家族として子犬や子猫を迎えられた方々もたくさんいました。
まずは今年が無事に終わってくれないといけませんが・・・
新しい年も良い年でありますように。