猫 アメショー 結石 水腎症 手術 尿路全部を作りなおすの巻
新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
そんな、ウイルス蔓延の時期でも、動物は関係なく具合が悪くなります・・・
今回は、おなじみの尿管閉塞、水腎症に尿道閉塞まで起こした、12歳になるLちゃんのお話です。
最初に言っておきます。
今回長いです。
途中の事柄はだいぶ削っていますが、全部書いたら短編小説ができそうです。
文章の長さは入院の長さに比例していると思って読んでください。(^_^;)
最初の連絡は、公私ともに仲の良い同級生の先生からの電話でした。
「知り合いの先生のところに、水腎症の猫がいるらしいんだけどみてもらえるかな?」
「もちろん、いいよ!」「で、どこから来るの?」
「三浦。っていうかほとんど油壺。」
「まじ!!遠い!!うちはいいけど、大丈夫なの?」・・・
そうこうしていると、主治医の先生からも連絡があり、飼い主さんもLちゃん連れて来院。
いいのか悪いのか、外出自粛のため道路が空いていて、通常の半分の時間で到着したとか。
問診では、Lちゃんは食欲も元気も全くないとのこと。
早速、検査をしてみると。
腎臓から尿管、膀胱内まで結石だらけ。

左右の腎臓はもれなく閉塞性の水腎症。


血液検査も、腎パネルは測定値オーバー&Cre 11.9
貧血傾向にもあります(腎機能が低下するとよくあることです)。
さあ、どうしましょう??・・・
ブログ読んでいる方々はおなじみの処置です。
そうです、腎瘻チューブを設置します。
この状態では、短時間の麻酔しか行えません。
開腹して、素早く左右の腎臓にチューブを挿入。
流れていない腎臓内の尿とこれから作られる尿を体外に排泄させるルートを作ります。

そんな、リスク大ありの第一段階の手術も何事もなく無事終了。
ピンクの即席術後服がかなりお似合いの今回のLちゃん、本当に性格が良くて(^ ^)
初対面で術後にも関わらず、お腹出してアイドリング(猫のゴロゴロの音です、正式名称があったはずですが、ウチでは自動車的な感じの通称でそう言ってます)。
長丁場の治療において、性格の良さは本当に助かります。
治療はここからが本番。
徹底的に点滴をして、腎機能の改善に努めます。
待つこと数日、徐々に改善していき、Lちゃんもかなり具合よさそう。
そんな、アイドリング全開のLちゃんも次のステップ。
再度お腹を開けて、腎瘻チューブを抜き、その穴にSUBを設置。
同時に、膀胱内に無数に貯まっている細かな結石も除去。
貧血の進行もなんとか踏みとどまってくれて、
こちらも無事に終了。

尿に感染も起こらず、ベストなタイミングでSUBの設置もできて。
通常はこれで、安定すれば退院!!
っと思いきや・・・・・12年ものの結石。そんなに甘いのもじゃありませんでした。
SUB設置した翌明け方。
なんか、顔つきがおかしい・・・
排尿が・・・ない(-_-;)

朝スタッフが来てレントゲンで確認すると、
それまで尿管に詰まっていた結石が数個落ちてきて
今度は尿道に閉塞。
膀胱にも細かな結石が。
こんなことって・・・
落胆していても事態は改善しないので、カテーテルを尿道に挿入して、解除。
尿管の中には、今にも落ちて来そうな結石があと1つ。
念のため、SUBも洗浄すると、そちらはそちらで細かな結石がしっかり回収されます。
となると、たまたま詰まった1個の結石だけではなく、今後も腎臓から細かなCa結石がSUBを通って落ちて来る。
今すぐに膀胱切開で結石回収しても、意味がなく。
貧血も少し進行しているので、輸血してからじゃないとこちらの条件も麻酔リスクが高くなる。
「尿道に詰まったら解除するってことで、結石の増え方も観察がてら少し様子見ましょう」
その翌日も詰まり・解除して・・・
解除さえしてしまえば調子のいいLちゃん。
ここまでの入院もだいぶ長いので、
飼い主さんと話し合いの結果、三浦のご自宅へ一時退院しました。
今後は、尿道につまらなくするために会陰尿道瘻の手術を計画しなくてはいけません。
しかも、その手術も尿道を直接皮膚に開口させる方法では、
のちに開口部が狭くなり通常の猫の出口と同じになってしまうため
年単位の維持を考えると、いつも行なっている尿道を再建するような方法でバッチリ成功させないと・・・
今までこの手術を行った子たちはみんなうまくいってます。バッチリおしっこ出てます。
ある1例を除いて・・・あの子のことが頭をよぎります・・・
その子は1歳になるときに尿道閉塞を起こし第一段階の手術を行ったのですが、
炎症がひどく、再建した尿道が2週間ほどで閉塞。
2回目の手術では皮膚に直接開口せざるおえなくなり、結石がストラバイトだったからいいものの、
2年くらい経ったときには、通常の猫の大きさの穴になっていました。
今回のLちゃんは、コントロールできないCa結石。
通常の猫の大きさになってしまう手術は意味がありません。
一発でうまくいかせないと、絶対にダメ(T ^ T)
そんなプレッシャーとともに、もう一つ難問が。
再建するタイプの会陰尿道瘻の手術を行うと、4~5日は患部にカテーテルを留置して、
縫合した部分が尿に触れないようにしておかなくてはいけません。
そうなると、せっかく感染もなく設置したSUBですが、間違いなく感染を起こすことが予想されます。
SUB管理の最大の敵は、感染です。
チューブの内部が汚れ、ドロドロした尿が、閉塞を招きます。
飼い主さんにも、この辺のリスクとそれでもやらなきゃダメな状況も十分理解してもらい。
一時退院もつかの間。正確には5日間。
やっぱり、尿道に詰まりました。
そのときには、案の定膀胱内には細かな結石もいっぱい。
幸い貧血が改善傾向にあったので、やります、やるしかありません。
っと、決心したその日の尿には、
すでに感染が(T ^ T)
やる前から・・・
カテーテル操作ですぐに感染が成立してしまうSUB、着実に追い込まれている感じ・・・
そんな私を尻目に、Lちゃんは相変わらず腹出しとアイドリング!!!癒されます(>_<)
気持ちを立て直し、いざ会陰尿道瘻。
おのずといつも以上に慎重になってしまいます。
「よし、順調!尿道切開して・・・」
「あれっ!!!」
普通なら8fr(約3mm径)が余裕で入るはずの尿道が、狭い!6frしか入らない!!!
完全に見えない何かに試されているとしか思えません。
まあそんな3度目の手術も、無事に終了。
尿道からは、先日詰まった結石も流れ出してくれました。
その後は、通常よりも少し長く入院してもらい、SUBの洗浄をすること数日。
つまりもだいぶ綺麗になり、おしっこもバッチリ出て、Lちゃんもいい顔に。

心配していた、腎障害の程度もほぼ正常値に近い状態。
感染は持続するものと思われるので、今後もしっかりとケアが必要ですが、
なんとか一件落着、本退院となりました。
飼い主さんも、笑顔。
長く入院したせいで、私もスタッフも癒し系Lちゃんが居なくなるのは、少し寂しい気もしますが。
元気に帰ってもらうのが一番。
長かったぁ。
そして、勉強になったぁ。
2日間休憩した後は、また違う病院からおしっこが出ない猫が・・・
Lちゃん退院の最中に、先ほど話に出て来たあの子も結石の再発で数年ぶりに・・・こちらもなんとか無事に退院。
猫のおしっこ問題は、コロナウイルス自粛とは無縁のようです。
私も、皆さんもウイルス感染して具合悪くなってる場合じゃありません。
気をつけましょう!!