犬の膀胱腫瘍 血尿 手術 移行上皮癌
移行上皮癌という膀胱に発生する悪性腫瘍があります。
この移行上皮癌、浸潤性が高いこともあって手術や抗がん剤によって根治させることは非常に難しく
生存期間もなかなか長期は期待できない相当悪者の腫瘍。
そのほとんどは膀胱三角部(膀胱の出口)に発生します。
左右腎臓で作られた尿は、左右それぞれの尿管を通り膀胱へ流れていきます。
それら左右尿管の接合部(出口)は膀胱三角部にあり、
膀胱に貯まった尿は膀胱三角部の先の尿道を通り体外へと排泄されます。
お気づきでしょうか、膀胱三角部・・・尿管やら尿道やら非常に混み合ってます。
そのため、発生した腫瘍のみを切除することは困難なことが多く
切除するには膀胱全部を腫瘍ごと摘出した上で、尿の流れを確保するために
尿管を体外へ排泄可能な部分につなぎ直すことが必要となったります。
(ケースバイケース、今回は詳しく書きません)
しかしこんな移行上皮癌、三角部とは反対の頭側(尖部)に発生することがまれにあります。
今回診させていただいた、8歳になるT.プードルの女の子。
6ヶ月前から、尿に血が混ざるとのこと。
毎回の出来事ではなく、時々であったため飼い主さんも様子を見ていたのですが
一向に治らないとのことで来院されました。
検査をしてみると・・・
膀胱の頭側に腫瘤がありました。細胞診の結果は「移行上皮癌疑い」。
ただ幸いなことに、腫瘍以外の粘膜は非常に滑らかで限局して発生している可能性が高く、しかも頭側部。
その他の検査でも転移を疑う所見はありません。
飼い主さんと相談の結果、膀胱部分切除術により腫瘍を悪性対応で切除し
病理組織検査にて「何者か知る」ということに決定しました。(病理組織検査にて初めて確定診断となります)
手術自体はそれほど時間はかかりませんが、
膀胱の約1/3くらいの切除となりましたので術後は膀胱の膨らみが足りないため、
少しの期間頻尿になります。
病理組織検査の結果は、移行上皮癌。
しかし、浸潤性は乏しく正常組織との境界も確保して切除できたため、とりあえず一安心。
再発の可能性はありますが、これであれば生存期間にも期待ができます。
今後は、再発抑制のために投薬をしながら経過観察となります。
「血尿が出る」という症状の中にはこのような病気のこともあります。
早めの受診をおすすめします。