猫 胆管閉塞 黄疸 胆嚢‐空腸吻合術(手術)
肝臓に隣接している胆嚢(たんのう)という臓器があります。
胆嚢の中には胆汁(たんじゅう)が貯留しており、脂肪の代謝に一役かっています。
胆嚢内の胆汁は、胆嚢‐胆管(たんかん)‐総胆管(そうたんかん)というルートを通って、
十二指腸に排泄されています。
胆管閉塞は、胆管もしくは総胆管において胆汁の流れがストップしてしまう病気です。
閉塞してしまう原因はさまざま、犬も猫も起こります。
- 結石(胆石)による閉塞。
- 胆嚢内で胆汁がどろどろに固まってしまい流れない(胆嚢粘液嚢腫)・・・犬で診られます
- 胆嚢炎や胆管炎による閉塞
- 膵炎による二次的な閉塞。
上記1~3では、胆嚢自体の問題ですので、胆嚢を摘出するなり何なりで対応すれば良いのですが…
(もちろんそれはそれでリスクはあります。それはまた次の機会に)
困るのは、4番目の膵炎です。
膵臓は、胃と十二指腸にへばり着いている臓器です。
膵臓で作られる膵液は膵管を通って十二指腸に排泄されます。
!!!お気づきでしょうか!!!
そうです、胆汁も膵液も十二指腸に排泄されます!!!
しかも猫の場合は、総胆管に膵管が合流して1本となり十二指腸に開口しているので
急性の膵炎を起こした場合には炎症の余波により胆管閉塞(胆汁うっ滞)が起きやすいのです。
くわえて老齢の猫では、膵炎・胆管肝炎・腸炎が単独または併発して起こることがしばしばあります。
(これらを三臓器炎と言います)
軽い子はまだしも、このような病気がガツンと発症すると、
ご飯は食べず、嘔吐は続き、見る見るうちに黄色くなっていく(黄疸)・・・
最悪のパターンで進行してしまいます。
炎症の程度にもよりますが、急性膵炎が治まるまでにはある程度の時間が必要です。
膵炎の発症自体も命が危ないく、治るのを待っていられる体力があればいいのですが、
閉塞性の黄疸が併発してしまうと膵炎とのダブルパンチでどんどん体がまいってしまいます。
こうなってしまうと行える治療は限られてきますが、最期の手段「外科の力」に頼ります。
このまま内科治療で押しても経験的にじり貧になっていくケースが多く、
かなりリスクのある状況での手術となりますが、
今後の治療のスタートラインに起たせるためにはこれしかありません。
胆嚢・胆管の洗浄と胆嚢-空腸吻合術
簡単に言うと
「胆管・総胆管の閉塞の解除も行い、さらには胆嚢と空腸を直接結んで胆汁の流れをもう1ルート確保しよう」
という考えの手術です。
当院で実際に行っている手術の写真です。
先ほども言ったように、手術のあとが勝負となってきます。
正直、助かる子とそうでない子といます。
あきらめずに、ここまでやってみる。
こういったことも治療の選択肢の一つです。