犬の会陰ヘルニア 手術 排便困難
犬の種類には、流行りがあり。
最近はだいぶ数が減った、M.ダックス。
会陰ヘルニアといえば、ダックスと言っていいほど好発犬種です。
が、数が少なくなれば
自然に病気の件数も減ってきます。
とは言え、「最近来ないなー」なんて考えてると、必ずと言っていいほど来院するのが、良いか悪いかうちの病院。
今回は隣の市から、Pちゃんが来院しました。
話を聞けば、4年前にかかりつけの先生で会陰ヘルニアの手術を受けていましたが、約1年前から再発し、便が出にくい状態に。
更にはここ2週間、便はほぼ出ていないと言って良いほどの量しか排便できず、Pちゃんも食欲が全くないとのことでした。
キャリーバッグから出てきた、Pちゃんのお尻は大きく腫れ。
テニスボールほどの便の塊が、肛門の左側にあり、その横から泥状の便が少し出てくる程度。
「これじゃあ、辛いし、食べられないよね」
見た目はともかく、お腹の中もどうなっているのか?レントゲンで確認。
造影剤を使って、尿道の蛇行の程度と、膀胱の位置を確認します。
すると、案の定膀胱は骨盤を通り越して、お尻の方へ変移。
指を入れて押し込んでやって、初めて正常な位置に治ります。
(厳密に言うと、私の手の骨が写ってると怒られちゃいますが、ご勘弁)
そんな状態のPちゃん。
この日はとりあえず、病態の把握も兼ねて、摘便。
腸を傷つけないように、慎重に硬く固まった便を崩しながら、掻き出します。
そして手術の打ち合わせ。
マンパワーがないうちの病院では、お腹を開けて行う結腸固定と前立腺固定(膀胱固定)、
最終的な会陰部の修復手術は、2回に分けて行うようにしています。
さあ、まずはお腹を開けて、各臓器を正常な位置に固定します。
通常この手術では、特に大きな問題は起きません…
お尻の方に蛇行している結腸をゆっくりと引き出し…
血圧が一気に跳ね上がりました
((((;゚Д゚)))))))
とにかく麻酔管理で色々対応しながら、手術を終えます
これは再還流障害なのか?考えられる対応を術後もしっかりと。
腸閉塞が長く続いた解除後、胃捻転の整復後など、鬱滞していた血行や腸内細菌が一気にばら撒かれる。こんなことが再還流障害として挙げられます。人で有名なクラッシュシンドロームもそんな中の一つです。
が、会陰ヘルニアでここまで排便困難が続くとこんな事も起きるのか?
なんて考えてると、術後も続く高血圧の状態
全身性の炎症も術前から認められて、全てが重なった結果なのか?
お腹を開けた部位の皮下出血が止まりません。
術後数時間、圧迫してみたり、一般的な対応はするもののイマイチ
仕方がないので、もういちど麻酔をかけて開け直し、皮下の部位は電気メスを使い見える出血を止め、お腹の中は基本出血箇所はない術式のため、エコーで異常がない事を確認、お腹は開けずに、そのまま皮膚縫合。
その後大きく出血はないものの、それでもジワジワ
今夜は寝られない(T . T)
それでも深夜には止まり。
翌朝血液を確認。
まあこのくらいの失血だろうの範囲内。
出血すると一緒に血中タンパクも失われます、なので持続出血かどうか確かめる為もあり、必ず血中タンパクも測定します。
それにしても、ALB(アルブミン)が必要以上に下がってる。???
まあ問題は起きましたが、Pちゃん、食欲も出て数日で一時退院。
あのままじゃ、どっちみち一気に全ての手術は出来なかったでしょうけど…
次の手術に備えます。
気になってた、ALBも気持ち上昇?ほぼ横ばい?
とにかくこのままじゃ、完了しないので、1週間を目処に決めにいきます!
いつものように医療用メッシュを使い、手順に従い、丁寧に修復を行っていきます。
そして、無事終了!
通常こちらの手術の方が出血がを伴いますが、思った以上に出ない。
状態が改善されているのでしょう。
まあ、ほっと一安心。
翌朝には、綺麗に排便され。
いい感じ。
後は数日入院してもらい、経過観察。
良かったぁ…
っと、すんなり終わるならブログには書かれない、みなさんも薄々お気づきかと。
って、ここまででも十分すんなりじゃないけど、若干麻痺してます。
先程から出てきているワード「ALB」…
傷が治るために最もと言っていいくらい必要なタンパク質。
通常は3.5前後
Pちゃん前回の術後2.5。
2.0を下回れば、まあ傷はくっつかない。
くっつかないってことは、必ず感染がおきます。
お尻の手術なので、感染リスクは高いですが、今までほぼ0と言っていいほど起きた経験ありません。
メッシュを入れてる手術なので、感染が起きれば、最悪メッシュを取り除かないと改善できない。
メッシュを除去したら、会陰ヘルニアは元に戻ってしまう。
それでも治すためには、メッシュの代わりにあそこの部分を利用して…
頭を巡らせます。
日々確認
ALB2.1 (T ^ T)
持続出血はない。
漏出してるなら腸
それは既に考え、低脂肪食は与えてる。
コントロールできなければ、ステロイド。
ステロイド使えば、感染しやすくなる。
(先程の頭を巡らせる文章に戻って下さい)
または、全身性の炎症などによる消費?
それなら時間が解決してくれるはず。
もちろん考えられる治療はやっていますが、
「後は蓋をして待つ」
みたいな、そんな状況。
成るようにしかならん!!!
心を強く持たないとやってられません。
あと数日で術後1週間
そこまでいけば、傷はつく。
そんななか、当のPちゃんはというと。
こちらの心模様は何にも気にせず、元気。
食欲もあってちょっと贅沢言ったりして。
毎日快便。
救われます。
そして、翌日。
ALB2.2
更に1日
2.3
これでもう大丈夫。
答えは、消費でした。
そして、無事退院
抜糸も終了。
もちろん排便良好。
排尿も良好。
長期的な観察は必要ですがALL OK (^-^)
Pちゃん、お家でも以前にような姿に戻ったようです。
現在12歳、長生きできるといいね!
「出したいのに出ない」
自分の身に起きたらゾッとします。
早めに対応してあげて下さい。