犬 胆嚢粘液嚢腫 肝臓・胆管障害 手術
胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)・・・
犬特有の胆嚢の病気です。
胆嚢は肝臓に隣接し、脂肪の消化を助けるための胆汁を貯めておく臓器です。
通常胆汁はさらっとした液体で、
胆嚢管~各肝臓からくる胆管に合流~総胆管~十二指腸へ排泄されます。
胆嚢粘液嚢腫は、そんな胆汁がコーヒーゼリーのようにドロドロに固まってしまい流動性を失ってしまう病気です。
(それ以前の病気として「胆泥症」がありますが、こちらは流動性があります)
胆汁が固まってしまうと・・・
肝臓や肝内胆管にも炎症が広がります。
くわえて細菌感染も起りやすくなり
進行によっては胆嚢破裂、胆管閉塞(黄疸)を招きます。
「胆嚢粘液嚢腫になってしまった時点で、
出来ることなら肝臓や胆管に炎症があまり広がらないうちに胆嚢切除を行った方が良いのでは?!」
と個人的には思っていますが。
大学病院等の専門家の間でも意見が分かれるところです。
そんな、悩ましい病気。胆嚢粘液嚢腫。。。
今回の症例は、悩んでる暇はありませんでした。
約1年前から依頼があった先生のところで内科治療を継続していましたが、限界がきています。
現在は安定していますが、少し前には発熱があり状態も悪かったとか・・・
胆嚢は教科書にでてくるんじゃないかと思う位、典型的な胆嚢粘液嚢腫のエコー像。
血液検査でも肝臓胆嚢系の項目はオーバーし、軽度の黄疸も併発しています。
大まかな話は先方の先生にお任せし、後日直接飼い主さんと少し詳しい話をさせていただき、
「お願いします」とのこと。
ただしワンちゃんにも、飼い主さんにも、獣医にも・・・そんなに気楽な手術じゃありません。
まずは術後1週間(周術期)を乗り切ってくれないことには、話が進みませんし、
今回のような症例では、胆嚢を切除しても内科治療の継続が必要です。
要するに、「切った・すっきり・ハイ治りました」とは全然いきません。
そして切除をまかされた獣医はというと(私のことですが)
・・・予定日の数日前からあれやこれやと考えを巡らせます。
あらゆることを想定し、引き出しフル活用。
いざ開腹!!!
「やっぱり」
癒着が半端じゃありません。
過去に何度か小さな破裂をしていたことが予想されます。
とにかく地道に胆嚢の剥離を行い、総胆管の洗浄により胆汁の流れを確保。。。
時間はかかりましたが、無事終了。
後は術後管理です。
今回は依頼していただいた病院で行うことになっていましたので、何度か私も足を運び経過観察。
5日目以降はどんどん回復し、無事退院
今後も治療は継続ですが、危機は免れたかと思います。
最近、この手術を行うことが多くなりました。
検査機器が進歩しているので見つけやすくなったと言うこともありますが、
病気自体も増えている気がします。
病態の把握が非常に難しい病気なので、判断に悩むことが多いですが、
やっぱりひどくならないうちに切除・・・がいいと思います。