犬の肺葉捻転(肺捻転) 開胸手術
肺葉捻転(はいようねんてん)、ちょっと聞きなれない病気です。
犬の肺は、左側に前葉(前部・後部)、後葉 右側に前葉、中葉、後葉、副葉と6枚に分かれて存在し、各葉に枝分かれした気管の根元で捻転(ねじれる)してしまうことで、肺のうっ血・壊死などが起こります。
特に、胸の深い大型犬に見られ、右の中葉もしくは前葉に起こりやすい病気です。
小さいころから診察している7歳になるボルゾイのOちゃん、「今朝、血の混ざった咳を1回した」とのことで来院しました。
早速、レントゲンを撮ってみようと試みるも、そこはボルゾイ体重48キロ(ちょっとお肉が付いていますが)なんていったって胸が深い、横に寝かせての撮影はなんとかなるものの、うつぶせの撮影は距離がありすぎてうまくレントゲン撮れません。
症状も切迫していないため、この日は抗生物質と止血剤、気管支の薬で様子を見てみることに。
翌日は、咳ほとんど出ず(もちろん血も混ざらず)再び経過観察。
がしかし3日目、明らかに状態が悪化、喀血・血痰も度々見られるようになりました。
これは、ただ事ではありません。うちのレントゲンの最大出力でもう一度トライ。
すると右の肺中葉に空気が入っていないことが分かりました。エコーで診ても正常な肺の画像ではなく完全に虚脱しており、血様の胸水も貯まっていました。
症状と併せて考えると肺葉捻転もしくは肺腫瘍が考えられます。
実はこのOちゃん、4年前に右前葉の肺葉捻転を起こしています。その時は咳などの呼吸器症状はなく、いろいろと大学病院で精査した結果判明し、そのまま摘出手術を受けていただきました。
捻転て2度もあるのか???と考える間もなく、症状はどんどん悪くなっていきます。
本来ならCT撮影である程度診断も絞りこめる可能性がありますが、週末も重なり高度医療機関はほとんどが休み。麻酔をかけるのも1回で済ませたい・・・状態から判断しても猶予はあまりありません、右中葉が原因ということは明らかで、実際には診断よりも開胸してどうにかするしか助かる見込みはありません。
開胸手術、やりましょう!飼い主さんも状況を十分に理解してくださり、「お願いします」とのこと。
そこで、いつも難しい手術を一緒に行っている仲間の先生に集合をかけ、手術開始です。
肋骨の間から、胸を開けて目視・・・うっ血して肝臓のようになった右中葉がすぐにわかりました。
そして問題の右中葉を摘出、閉胸して手術は無事終了です。
摘出できたからと言って、「ハイ終わり」とはいきません。
手術によるダメージからの回復。
肺捻転でみられる乳び胸(特有の胸水が貯まる病気です)の併発、そして治療。
術後管理で入院すること10日間。
とりあえず無事に退院!
全快とはいきませんが、通院で管理可能です。
開胸手術は麻酔医が肝心です、完璧な呼吸管理・麻酔管理を行ってくれたA先生。
助手に入ってこれまた完璧なサポートをしてくれたT先生。
そして、輸血に協力してくれたワンコ達。
感謝です!!good job!!!!
そして何より、退院後も次々問題が起こりましたが、一生懸命頑張って乗り越えてくれたOちゃん。
これからも元気に過ごしてね~