犬の水腎症 腎結石 尿管ステント設置
10歳になるダックスのKちゃん
「この頃歯石がたまってきたせいで、臭いが気になる」と飼い主さん。
確かに、全体的に歯石がついていましたので
「10歳にもなったことだし、麻酔をかけて歯石取りしましょうか?!」
と提案させていただき、麻酔の術前検査をしました。
血液検査では特に問題はなく、レントゲンがあがってきてみると・・・
あれ!? 左の腎臓のかたちがおかしいことに気がつきました。
改めて、腹部のレントゲンをちゃんと撮り直すと
やはり左の腎臓は大きく、かたちも不整。
腎臓内には細かな結石が結構な数存在しています。
さらには、膀胱内にも数個の小さな結石が。
「ちょっと、歯石どころではないですねぇ」
飼い主さんには、左の腎臓(もちろん右もあわせて)の精査をおすすめしました。
エコー検査をしてみると・・・ビックリ
重度の水腎症(腎臓から尿が流れていない状態)がみられました。
写真:黒くなっているところは腎臓内の流れていない尿です(水腎症)
続けて、腎臓の排泄機能をみるために造影剤を投与。
どうやらなんとか機能はしているようです。
ここまでわかったところで、飼い主さんとご相談。
現在は水腎症になっている左の腎臓もなんとか機能を保っていますが、
近い将来必ず機能を失います。
右腎臓のみでも生きてはいけますが、機能を失った水腎(左腎臓)は感染源となる可能性が高く(膿腎)、
最終的には摘出することが必要となります。
水腎症の原因は、腎臓内の細かな結石が集積して尿管への出口(腎盂~尿管)を塞いでいると考えます。
(いつからこうなっていたのかは不明です)
ラッキーなことに血液検査・尿検査・造影検査の結果からも左腎臓の機能はまだ残っていますので、腎盂の閉塞がとれれば(結石の除去)温存できる可能性があると思います。
ただ、結石はカルシウムの可能性が高く再発もあり得ますので、閉塞を解除して尿管ステントの設置を行うのが現時点ではベストと考えます。
飼い主さんも、メリット・デメリットいろいろと考え、
(前回ブログのステントのデメリットの部分をお読みくださいhttps://okubo-vet.com/2014/09/18/1590/)
話し合いの末、尿管ステントの設置もあわせて手術を希望されました。
手術は翌日でしたので、イメージトレーニング大会!!!
実際に手術を行うと、一番大変なパターン
腎臓内の結石は長期間存在していたため粘膜に食い込んでとれません
どうにかステントを入れないと術後すぐに元の状態にもどってしまうことが予想されました。
・・・格闘の末、ステントはしっかり入り、無事終了。
写真は設置されたステントを指しています。
術後2日目には水腎症だった左腎臓も、かなり縮小。いつも見る腎臓のそれらしい感じになりました!
写真:水腎症が改善した左の腎臓のエコーです。ステントも見えます。
今後も経過を追っていかなくてはいけませんが、しばらくは左の腎臓の機能も保てると思います。
いつもこのような難しい手術を一緒にやっているA先生、すばらしい助手っぷり感謝です。
今回の症例は、「機能を残している腎臓をいかに長持ちさせるか」という目的で行った手術です。
こうした問題はほとんどの症例において、腎不全が進行してから見つかります。
(今回のケースはまれで、ラッキーでした)
しかし、腎不全+水腎症になったからと言ってすべて諦めると言う訳ではありません。
ステントの設置に限らず、可能性を信じて行える方法(治療)はほかにもあります。
お気軽にご相談ください。