犬・猫 尿管ステント設置術 尿管閉塞
腎臓で作られた尿を膀胱へ運ぶために、腎臓と膀胱は尿管という管でつながっています。
尿管が何らかの原因(結石や腫瘍など)で閉塞してしまうと、
もちろん尿の流れが悪くなってしまいます。
詰まり(閉塞)の原因を取り除けばもちろん尿は流れるようになるのですが、
再発(再び詰まってしまう)の危険性がある場合は、
尿管ステントという柔らかいチューブを尿管内(腎臓から膀胱まで)に設置することで
尿の流れを確保することができます。

写真:実際に使用している動物用(犬・猫用)の尿管ステントです。
腎臓および膀胱から抜けないように両端はクルリンっとなってます(ピッグテールといいます)
人間の医療では結構ポピュラーな方法で、膀胱の内視鏡で行うことも可能とか・・・
しかし、犬や猫といった小動物では開腹下で行うこととなり「人と同じく低浸襲」とはいきませんが
かなり最先端な技術であり、尿管の再閉塞を防ぐという目的では現時点で一番ベストな方法と言えます。
現在勉強させていただいている、麻布大学附属動物病院の腎泌尿器科でも
尿管ステントという技術(方法)を取り入れた治療を日々行っています。
とはいえ、そう簡単な手技ではありません。
特に結石による閉塞の場合は、尿管の蛇行や尿管炎による狭窄などが併発しているため
尿管にスルスルスルっと入れることなんて全くもって不可能な話です。
更には尿管が全域使える状態ならともかく、途中で通らないなんて時は
尿管を膀胱につなげ直したり・距離が足りない時はどうするなどと、
ありとあらゆる引き出しを持って望まないといけません。
(これに限らず外科はすべてそうなのですが)
まあ、このような最先端な技術。
大学病院においても日の浅い手技であり、
いくつか予後に関する論文も発表されていますが、まだまだこれから
実際には、
- 破損してしまったり(折れ曲がったり・切れたり)
- ステント内に結石が詰まったり(閉塞)
- 粘膜への物理的な刺激により血尿が出たり
- 人では常に違和感があるなどと言われていますが、動物にもあるのかもしれません(不明です)
こんなことがデメリットとして挙げられます。
数ヶ月でダメになることももちろんあり、果たして何年もってくれるかは??です。
(入れ替えができれば行いますが、すべての症例で可能と言う訳にはいかないと思います)
ステント自体の素材といった部分でも、今後の動向に注目といったところでしょうか?!
現在は尿管を介さない(腎臓と膀胱を直接つなぐ) SUBというカテーテル設置による治療法も存在します。
症例の状態や年齢などに合わせて
入れるか?今回は入れないで様子見るか?
個人的には、すべての尿管閉塞の症例で入れればいいということでもないと思っています。
デメリットもよく理解していただいた上で、我々獣医と飼い主さんとで話し合いとなります。
次回は、実際に当院で行った症例をご紹介します。