長期間水腎症になっていた猫 尿管結石 尿管閉塞 手術
私にとっては、全然久しぶりではない尿管結石。
ブログに書くのは、久しぶりな感じです。
そして、今年の締めくくりは、やっぱりこの病気でしょう(いいんだか悪いんだか)
今回の子は、長年水腎症のまま経過観察されていた猫のHちゃんです。
最初は、獣医師会でお世話になっている先生からの電話でした。
「尿管結石の猫が、セカンドオピニオンで来てるんだけど、先生の方が詳しいから紹介しておいたよ」
「はーい、わかりました。話を聞いてみます。」
程なく、Hちゃんを連れた飼い主さんがいらっしゃいました。
早速話を聞いてみると・・・
さかのぼること5年前、結石の閉塞疑いで急性腎障害に。
診断も曖昧だったらしく治療らしい治療もせず。
その後なんとか持ち直して経過観察。
昨年も一度具合が悪くなり、夏には2次診療施設も受診。
その施設での診断も尿管閉塞、腎障害。しかしなぜかすぐには治療困難とのこと??
そしていよいよ当院に受診。(ここまで長いなぁ)
当のHちゃんは、見た目は普通(ぐったりというわけではありません)。
嘔吐があるようですが、食欲もそれなり。
肝心の血液検査では、Cre値4.4(しっかりとした腎不全です)
そしてレントゲン
膀胱の手前の尿管と思われる場所に結構な大きさの結石。右の腎臓内にも小さな結石。
うーん、これが原因っぽいね
続いては、エコー検査。
左の腎臓は・・・久しぶりに診るパンパンの水腎症。
尿管を追っていくと
しっかりと?!結石が詰まってます。尿管の太さも2.2mm。
続けて検査した右の腎臓は萎縮して変形しています(それでも頑張って動いてるんだろうな)。
っとここまでの検査で、飼い主さんと相談。
「昨年の2次診療施設でもこの状態であれば、左の腎臓は機能していない可能性も高いと思います。」
「仮に右の腎臓1個で頑張っていて、Cre値がこの値であればその病態は慢性腎不全となりますので、麻酔をかけて手術をしても術後に腎不全の悪化が起こるかもしれません。」
「とにかく、左の腎臓が生きてるのか否かで、今後の治療が変わって来ますので、もう少し突っ込んだ検査をしませんか?」
ということで日を改めて、
IVP(静脈性尿路造影)・・・静脈内へ造影剤を投与すると腎臓に集まり、機能しているかどうか判断できます。
教科書的には、こんな値の腎臓で行うのは否定的ですが、一番負担なく検査できるのはこの方法。
通常は投与直後から5分後くらいで腎臓が造影されますが、1時間も待てばいけるでしょう。
どうかな?腎臓染まってくるかな?
右の腎臓は早い時間から造影されているので、バッチリ(懸命に頑張っているようです)。
そして待つこと45分。
左の腎臓も造影剤で増強されてきました!!!どうやら機能していそうです!
こうなれば、手術しても期待がもてます。
手順は以下のとうりです。
1、尿管切開によって詰まっている結石を取ります。膀胱側の尿管の疎通が確認できれば、尿管を縫って閉腹。
2、ダメならその場で尿管転植(尿管を膀胱へつなぎなおします)。
3、術後そのまま良好なら経過観察。
4、尿管切開部が炎症等により閉塞した場合は、もう一度手術で2に戻ります。
尿管に詰まった結石を取るだけでも、このような準備と行える技術が必要となります。
残念ながら、泌尿器の外科は1回で終わらないこともしばしばあります。
「じゃあ最初から、尿管転植やればいいじゃん」と思うかもしれませんが、
それはそれで、膀胱につないだ尿管の出口が炎症で閉塞することもあります。
したがって、最小限の方法で終わることが、ダメだった場合の次の手術をしやすくさせます。
SUBなどのデバイスの使用は極力避けること、使わないと助けられない子の最終手段となります。
手術は、無事終了。
膀胱側の尿管は結構細かったですが、疎通も確認でき尿管を縫って終わり。
後は、腎臓が縮んでくれることを祈るのみ。
手術翌日・・・若干小さい。少なくとも悪化はしていない。
3日目・・・そんなに変わらないけど
7日目・・・おぉぉぉ!!!腎臓縮んでる!!!!
そして、術後約3週間ほとんど正常な腎臓、Cre値も少しずつ改善。
Hちゃん診察台で緊張気味ですが・・・
食欲も元気もあって、経過良好。
よくここまで、頑張ってたね!よかったよかった!!
これからも治療は継続ですが、とりあえず一山超えました。
今年も、いろいろなことがありました。
うまくいった子ばかりではありません、助けられなかった子もいます。
でも、「とにかく目の前の子をどうにかする。」この積み重ねしかありません。
年明けには、やらなくちゃいけない手術もすでにいくつかあります
スタッフ一同、来年も頑張ります。
みなさま、よいお年をお迎えください。