犬の膿腎症(水腎症) 腎破裂 腎結石・尿管結石
今回の話は、14歳になるジャックラッセルのMちゃんです。
最初は、湘南の海のならび、東の方で開業されていて、
県獣医師会と大学同窓会の理事会でお世話になっている先輩からの電話でした。
まあ便利な世の中になって、写真というものが制限なく送れるので、
症例の相談にはもっぱらLINE。
レントゲンやエコーの画面を写真でパチリ。
病院で見るような鮮明な画像とは行きませんが、状況の把握は十分可能です。
早速、経過を聞き画像を見て・・・・
「これ、左の腎臓全くダメですね(水腎症)。しかも濁っているので、感染(膿腎)してます」
「やっぱりダメよね!?先生のところにお願いしていい?」
その数日後、飼い主さんはMちゃんを連れて来院されました。
ここ数日は、少し食欲も出て保ち直しているとのこと、でも元気ありません。
早速検査をすると。
案の定、左の腎臓はダメそうです。
パンパンの水腎症だし、濁ってる。
そして、尿管に出たところでガッツリ石詰まってます。
こんな結石、落ちてくるのか?ってなくらいの大きさ。
さらには、腎臓内にも多数の結石。
「とにかく手術でどうにかしてあげないと、このままの内科治療では無理かと思います。」
飼い主さんも紹介病院の先生から、手術の話を聞いてこちらにきてもらっているので、
理解は早く。
「お願いします」とのこと。
手術の計画としては次のとおりです。
1 腎瘻チューブを設置して、腎臓内の感染した尿を体外へ排泄。
2 尿管に詰まっている結石の除去
でも、腎臓内の結石が落ちてきたら・・・???
3 腎瘻チューブ抜くときに、SUB? ステント?
なんだか先が思いやられますが、いまを助けないと始まりません。
というわけで、すぐに手術。
お腹を開けると・・・癒着。(やっぱり、犬ってこうパターンあるよなァ(~_~;))
腎臓目指して、かき分けていくと。
濁った腹水!!!!・・・左の腎臓頭側に脂肪組織の癒着。
腎臓破裂していたようです(T ^ T)
過去、学会に出席したときにこのような症例発表がありました。
その時は「こんなことってあるのかよ??」なんて思っていましたが。
ありました・・・うちにもきました・・・
こうなると、当たり前ですが前記したように腎臓周囲は激しい炎症によりがっちり癒着。
よって、尿管もそうですが腎問部へのアプローチもできないので、
結石も腎臓も摘出は困難。
仕方がないので
とにかく隙間から腎瘻チューブを設置して、腎臓の中を洗い。
膿を回収。
お腹の中も洗浄して、綺麗に。
腹膜炎になってますから、腹腔内ドレーン(特殊なやつ)を設置して。
体からチューブが2本も出ることになりましたが
洗ってる時間の方が長かったこの手術、とりあえず無事終了。
その後は、入院管理(実はこっちの方が大変かも)
敗血症ぎみの血液検査結果ですので、特殊な抗生物質を使ってしっかり治療。
炎症の連鎖を断ち切るような薬剤も投与。
やれること全てやって・・・
洗浄を続け、点滴して排液を促します。
そして数日。
すごく元気(^ ^)
食欲もでて、面会に来た飼い主さんもMちゃんのいい表情を見て一安心。
やってる私は…
この後どうしようかなと・・・・・・・
日々悶々と。
とはいえ、実際にはやるべき検査があって、その結果によってその後の手段も決定するのですが。
デバイス入れないとダメパターンは、
嫌だなぁっと、その後大変だよなぁって。
そんな思いを巡らせながらも、状態が良くなったので例の検査(結構おなじみのやつ)。
閉塞していた結石はラッキーなことに腎臓内に戻り、尿管の疎通も良いようです。
今後も結石が落ちてくれば再発するでしょうが、
飼い主さんには、今後の再発リスクとデバイスを入れた場合の管理のリスクとを理解していただいた上で、
今回のところは2回目の手術で腎瘻チューブ抜いて様子見。
Mちゃん、無事に退院(^ ^)
1ヶ月後の診察でも、腎臓の流れはいいようです。
とりあえず、良かった。
もう少し、長生きしていい時間を過ごせれば。
みんな願いは一緒です。