猫の尿路奇形 この子はオス?メス? 半陰陽?
みなさん聞き慣れない言葉かと思います。
「半陰陽」
簡単にいうと、
オスなのにメス メスなのにオス みたいな。
性線(精巣・卵巣)と外部生殖器がゴチャゴチャだったりします。
今回の子は、近くで開業している後輩からの電話でした。
「先生、猫の半陰陽見たことあります?」
「まあ、半陰陽かどうかは別として、先天的な奇形は見たことあるよ」
「今うちに、猫で外陰部はメスっぽいのに、睾丸がある子がいるんですよ」
「へー」
(後輩なので勉強させようかと思いちょっと突き放し気味に・・・)
「へーって(^^;; 飼い主さん去勢手術したいって言ってるんですが、見た感じおかしいんですよ!」
「メスみたいなんだけど、外陰部から突起が出てるし、だいたいにして陰嚢あるし」
「ちょっと・・・紹介してもいいですか?」
「わかったー、いいよー」
年末だったこともあり、年始の診察開始日を伝え、飼い主さんに電話してもらう様にお願いしこの場は終了。
年も明けて程なくして、飼い主さんから予約の電話が入り、早速診察することに。
飼い主さんと共に現れたのは、アビシニアン!
アビシニアンといえば、我々的には全く触らせてくれない様な子が多いイメージ。
みんなで身構えて、そーっと触ると・・・
ゴロゴロ♪ゴロゴロ♪
「撫でろ~!」と言わんばかりに頭をコツンコツン♪( ´▽`)
スタッフみんなで一斉に「かわいいー!!!」
こんなに触らせてくれるアビなんて!!!
ここぞとばかりみんなでナデナデ。
しばし、診察を忘れて・・・癒されます。
そして本題の診察。
お尻を見せてもらうと。
「うーん、確かに陰嚢はある」
「でも触れる精巣は片側のみ」
「その下に・・・メスっぽい外陰部だけど」
「よいしょっと!」
オスにある、陰茎が露出されました。
しばし観察し、考えること数分。
「この子はおそらくオス猫ですね!半陰陽ではなくて外陰部の構造奇形(細かくいえば肛門も)」
「ブリーダーさんにはメスって言われたんですけど^^;」
「えっ!! 名前は・・・オスでもメスでもいけそうですね( ^ω^ )」
改名は、しなくて済みそうです。
詳しく書けば、
肛門の腹側皮膚が形成されておらず。
陰嚢の中央部も皮膚形成ができていない。
陰茎を包む包皮の天井が形成されていない(だからぱっと見がメスの様)
陰茎も天井がない、通常は筒状の構造のはずが天井がないので尿道口はスリット状に開口。
まあざっとこんな感じ。
「おそらく、隠れている片側の精巣は腹腔内か鼠蹊部にあると思います」
「そうは言っても、一応手術で摘出したのもは病理検査に出しますね。それで雌雄が決定できます」
「尿道もここからカテーテル入りそうですが、嫌がるので麻酔かけてからやります、尿道の造影も」
そして、手術当日。
カテーテルはすんなり膀胱へ達し、その辺は奇形は無さそう。
お腹を開けて、膀胱反転させて。
隠れていた精巣は鼠蹊部に。
紹介してくれた、後輩も見学がてら、手術の第一助手に入り。
「オスですね!」って。
病理検査の結果も、オス。
これで正真正銘のオス。
一件落着・・・だといいのですが。
手術の時に採取した尿には細菌がいっぱい。
尿路奇形があると、もれなく慢性の細菌感染を起こします。
今後は、慢性感染による結石形成など。
問題は山住みです。
この子も長い付き合いとなりそうです。
まあそれでも、今のところは元気一杯、
ゴロゴロ全開。
自分で抜糸してくれちゃって。
問題が起きた時、それはその時に考えることにします。