猫の水腎症 尿管バイパスチューブ
今回は、高齢猫の水腎症
約6ヶ月前に、二次診療施設から今後の経過観察を希望されて転院してきた、15歳のMちゃんの話です。
ここに来るまでの話を聞くと、尿管閉塞から水腎症になり、ほとんど死にそうになって二次診療施設へ。
高齢という事もあり、担当の先生もかなり悩まれた様ですが、一番負担の少ない手術内容で治療開始。
その後2週間、なんとか退院となりましたが、今後も要経過観察。
そんな状態で、私のところにやってきました。
高齢であることと、左腎臓の萎縮、手術した右の腎臓はキープしているものの、
全体としてはそれなりの腎障害。
こうなると、慢性腎臓病としての治療を中心に行なっていくしかないので、定期的に来院してもらい経過観察。皮下点滴を自宅で頑張ってもらったり、サプリメントでフォローしたり、そんな感じで日々良好に暮らしてきました。
そんな、Mちゃん。そろそろ定期検査しましょうか?なんて言ってた矢先。
「先生、すごくよく食べて良好に経過してたんですが、この頃食べなくなってきたんです」って来院。
じゃあ、全体の状況を診てみましょう。ということになり、検査を実施。
血液検査での腎臓の項目は悪化。
エコーで観察した右の腎臓は水腎症となり、貯まった尿は膿状態(膿腎)
最初のうちは、よく理解できませんでしたが、どうやら尿管も全体的に膨らみ、水尿管。
前回の手術の影響で右の腎臓が腹壁に癒着して、尿管の走行がおかしくなっていました。腸にしては見え方が違うし、こんな位置にこんな管腔臓器??何度かエコーで診ているうちに、「あー!!これ尿管だ」って
一体いつからこんな状態なのか?尿管もなんでこんなに全体的に疎通していないのか?
原因などはともかく、これだと右の腎臓はかなり機能低下もしくは機能していない可能性も。
「15歳、どこまでやってみるか?」
「手術したとしても改善できるのか?」
まずは内科治療を行いながら、そんなやりとりを数日。
悩んだ飼い主さんからの答えは、「先生、手術やってみてください」
この期間、飼い主さんとは別に、私は私で一人作戦会議。
何をどうするのがベストなのか?
セオリーというか?丁寧なやり方で行うなら、まずは腎瘻チューブ。
その後、右腎臓の機能の有無を観察しながら、尿管の閉塞の原因を探る。
右の腎臓が生きてるなら、尿管を膀胱につなぎ直す(尿管転植)?
でも、これ再発だよね。
右の腎臓ダメなら摘出??
確かに、丁寧にやるならこの方法。でも手術は2回、転植がうまくいかなければ3回。
そんな体力も余裕もMちゃんからは感じられず、全く現実的ではない。
そうなると、すごく乱暴だけどデバイスの設置??
右の腎臓に貯まっている尿は、感染が爆発して膿状態。
SUBシステムだといきなり閉塞するよね(T . T)
ということで、導き出した答えが「尿管バイパスチューブ」
これならチューブが太いので、設置後の閉塞も回避できるかも?しかも、設置にかかる時間も大幅に短縮。
そして、1回の手術で終わらせられる可能性も高い。
「乱暴だけど、これしかないかな??」
飼い主さんもよく理解してくれて、「さあ手術」
ゆっくりのんびりやってたら、腎臓機能への影響も。
導入から終了まで、45分。尿管も観察してみましたが原因は??
腎機能は回復してくれるのか?
抜糸の時にエコーで診た腎臓は、それなりに水腎症は回復し、膿の様な尿もなくなっています。
でも、血液検査の数値は改善せず。
食欲もイマイチ、少しずつドライフード食べる様ですが、経鼻カテーテルからの給餌が必要な状態。
残念ながら、期待した様にはいきませんでした。
食欲増進剤なども併用しながら経過をみていくしかなさそうです。
積極的にやってみても結果が伴わない。
手術の後に予想外の出来事が。
全ての子がいい結果になって退院してくれればいいのですが、色々なことが起こります。
とにかく、ベストを尽くすしかない様です。
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