おしっこが?ここから出てる? 猫の排尿困難
泌尿器の仕事をしていると、定期的にやってくるリペア
隣の隣の市から、長年排尿困難を患っていた、Mちゃんがやって来ました。
オス猫の排尿困難、その多くは砂状の結石が尿道に詰まるパターン。
そんな状態の猫は、おしっこがしたいのに出ない。
なので、カテーテルを尿道に挿入して、閉塞状態を解除してあげます。
おしっこが出ないことは緊急なので、そのような処置はウチに限らず、多くの病院で行われます。
そして、この処置により起こりうるリスクとして挙げられるのが、カテーテル挿入に伴う尿道の損傷。
誰がやっても起きる時は起こります。
今回のMちゃんは、カテーテルが入ったままの状態で、来院しました。
「これ、いつから入ってるんですか?」
「かれこれ1週間になります」
うーーーーーーん
「この子、数年前から排尿困難を繰り返してるんです」
「その都度カテーテル入れて解除して」
「^^;じゃあとにかく、このカテーテル抜いて、どうなるのか観察させてください。」
このような、込み入った状態の子は、一回何もしない状況から、
どう出なくなっていくのかをみてみないと、何をどう治療すればいいのか?見当がつきません。
と言うことで、入っていたカテーテルを抜いて、尿道を造影。
そうすると…

尿道口から入ってすぐのところに、あるはずのないスペースができていました(゚o゚;;
いつの傷なのか???古いのか?新しいのか?
考えても仕方がないので。
まあとにかく、この憩室も含めてどうなるのか?経過観察です。
今までの経験でも、尿道に憩室があってもしっかり排尿できている子はいます。
数日後、排尿困難。
このときはカテーテルも意外とすんなり。
抵抗もなく、尿道もそんなに変化なし。
でもMちゃんもお母さんも、お疲れの様子なので、預かってみることに。
すると、なんとか毎日排尿。
食欲もいい感じ。
尿道を広げる薬などやってみながら、退院。
これで大丈夫ならいいのですが…
退院から1週間。やっぱり出ない(T ^ T)

パンパンに膨らんだ膀胱。
しかも、今度はカテーテルも入らない。
外来診察の合間に、もう一度トライ。
「あれ?お尻濡れてない?」
スタッフと顔を見合わせます。
そして膀胱をゆっくり圧迫。
すると、包皮の隣にできていた傷から、ポタポタと…
(T ^ T)「瘻管できたね」
仕方がないので、麻酔をかけて膀胱に直接カテーテルを設置。まずは排尿のルートを作ります。
そして再び造影、今度は膀胱から順行で尿道の様子を観察。

瘻管が描出できたら一番良かったですが、そうなかなか上手くいくものでもありません。
尿道は、憩室だった部分で完全に閉鎖。
「これじゃあ、カテーテルも入らないし、もちろん自力で排尿もできないよね」
ということで、尿道口を再建です。
とにかく外部に繋げて、排尿させないと生活できません。
そして、どこに開けるか?
お尻(会陰部)か腹壁か?
お尻に開けてあげた方が猫としては楽。
でも使える尿道はごくわずか。
飼い主さんにも、正直な思いや考えを伝えて、「試しに会陰に開けさせてくれないか?」ご相談。
「先生に判断にお任せします。」と返事をもらい、チャレンジ。
もちろん勝算はありますが、本当にやってみないとわからない。
まず最初の難関は、尿道が見つかるのか?
次に、使える尿道がどの程度あるのか?
そして、なんとか、尿道口を確保。いい勉強をさせてもらいました。
その後もちょっとトラブルがありながらも、術後設置したカテーテルも抜けて自力で排尿もできるので退院。
この後は、排尿ができるのかを経過観察していくしかないので、まずはお祈り。
もちろんやった手術に自信はありますが、お祈りして損はないので・・・(^_^;)
猫ですので何が起きても不思議ではないので、やれることは全てやります。

久しぶりに大変でしたが。
だいぶ長い入院だったので、すっかり仲良しになりました。
お母さんも笑顔でお迎え。
まずは、無事に退院できてよかったです。