猫 細菌性腎盂腎炎 水腎症
腎臓の中に流れない尿が貯留する水腎症。
結石の閉塞や、尿管炎による狭窄などの
閉塞性の障害による水腎症。
同じ水腎症でもそれらとは全く違う、
腎盂腎炎という病気があります。
特に細菌性腎盂腎炎。
エコーでみる限りは同じ水腎症。
血液検査結果や、そのほかの検査結果により推測すると言った方がいいのかもしれませんが、
「これっておそらく腎盂腎炎だろう」
ってな感じで診断します。
ただ、
腎盂腎炎であろうが、閉塞性だろうが、
腎瘻チューブは設置しても構わないので、
結果として、外科介入するなら同じですが。
そうはいかないのが、動物の医療。
今回のSちゃん。
状態は非常に悪く、他院で腎結石があると指摘され来院。
キャリー入って、更にはネットにも入って。
さあ、出てこようか!って手を入れると
激怒!!!!
「えーー」
爪でやられてちょっと流血(T . T)
「この子持たれるのダメなんです」
「えーーーーー」その情報最初に欲しかった
って、気を取り直して。
ネット越しにタオルで包み、診察台へ。
天井が開くタイプのキャリーで助かりました。
実際に持ってしまえば、案外大丈夫そう。
とはいえ、みんなで慎重に扱い。
その後、
血液検査・レントゲン・エコー・採尿
結果が酷い。
死んじゃいそうなくらい酷い。
腎障害が重度なのはもちろん、感染も重度。
それに伴い貧血も。
血液凝固異常も。
手術は?
重度の腎障害だけなら、まあいつものことですが、
そもそも貧血が重度すぎて今のままじゃ不可。
そのほかの検査も悪く、ここで無理してやったら、言い方悪いですが、とどめを刺しちゃいそう。
くわえて、すんなり触らせてくれないので、チューブ管理も難しい。
入院して点滴ですら??
制限がある中でとにかくやれる事を。
左右の腎臓に大きな結石は存在してるけど、病態は細菌性腎盂腎炎を強く疑う感じ。
内科管理がメイン治療であることは、確か。
飼い主さんも、Sちゃんの性格を分かった上で病態についてもよく理解してもらい。
連日通院。
お家での看護もとても頑張ってくれて。
食欲がない中の投薬や強制給餌。
「家だとやらせてくれるんですね」^_^
あとは、何しろSちゃんの生命力。
徐々に戻っていきました。
途中、後腹膜腔内や腹水としても液体の貯留がありましたが、腎臓の機能が改善してきたっところで、利尿剤を1発。
見事に解消。
最終的には、腎盂も落ち着いて。
腎臓の数値も落ち着いて。
しっかり自分から食べてくれる様になりました。
「しばらく通って慣れてくれた?」
Sちゃん、お母さんに促されて、渋々?顔出します。
「この子頭触るのは意外と大丈夫なんです」
「そーなんですか(°_°)」って
ゆっくり
オデコを人差し指で撫でてみたりして
連日ネットで更にタオルで包んでいたため、ちゃんと顔が見れたのはこの日が最初。

数週間越しのご対面
緊張のお顔(^_^;)
動物の医療は、限界があります。
動物はすんなり言う事を聞いてくれません。
動物は話せませんので検査以外の状態の把握は推測の域を脱しません。
どうにかしてあげたいのは飼い主さんも獣医師も一緒。
でもどうしようもないことや、詳細な診断ができない、治療のしようがない。
何をやるにしても、全身麻酔が付いて回る。
人の医療がかなり進んでいるため(それでも限界がありますが)、そこと獣医学との更なるギャップ。
大きな壁に囲われて、日々その中で精一杯動き回り、しょっちゅうその壁に当たってる気がします。
助けられる子とそうじゃない子、結局最後は生命力なのか。
1匹でも多く、飼い主さんとともに良い時間を過ごしてもらいたい。
いつものことながら、
日々精進。