猫の尿漏れ 慢性膀胱炎 治療
尿漏れ、犬では経験することが多いのですが。
猫の尿漏れ・・・珍しいです。
今回診察させてもらった11歳になるアメショーのMちゃん。
他院にて、慢性的に繰り返す膀胱炎の治療をしていたのですが
「どうにかならないものか」と悩んでいらっしゃいました。
お話を伺うと、
頻尿・血尿と言った膀胱炎症状にくわえて、若い頃から尿漏れがあるとのこと。
抗生物質を飲ませると一時的に症状は治まるのですがまた再発し、
尿漏れに関しては分かってはいたらしいのですが、診察していた先生方も??
かれこれ10年「漏れるのはしょうがない、こんなもんかぁ」と諦めていたそうです。
「猫で尿漏れ???」正直あまり聞いたことがありません。
さらに、尿漏れの様子を詳しくお聞きすると・・・
この辺が悪いのかな?!
頭の中にはいくつかの鑑別リストが浮かびます。
ただし、診察台に乗っているこの子はどう見ても猫です。
状況証拠はあるけど猫でもおきるのかぁ??としばし考えるものの・・・
悩んでいても無駄なので、原因究明のため早速検査。
尿の様子は・・・細菌でいっぱいです。
こうなるとあとは画像診断。

「やっぱり!尿道括約筋がゆるゆるです」
このような尿道括約筋のゆるみは尿漏れとともに慢性膀胱炎を招きます。
膀胱内の細菌感染はほとんどが逆行性(外陰部から)の侵入です。
尿道括約筋は関所の役割もしているので、そこがゆるいと・・・
悪い奴らも簡単に入ってきてしまいます。
今回のMちゃんの慢性膀胱炎、
その原因は尿道括約筋のゆるみではないかと診断しました。
治療としては、ゆるんだ尿道括約筋を締める薬を投与します。
膀胱内の細菌の退治も一緒に行い。
待つこと1週間。
「尿漏れの量がだいぶ少なくなりました!!」と飼い主さん
薬の副作用もなさそうなので、もう少し用量を上げてみてしばし経過観察。
なにしろ10年ものの尿漏れ、完璧にシャットアウトといくのかどうか?!
そうは上手くいきません。。。最初の薬は多少効果があったもののやっぱりダメ
次の薬を試します。まずは最小用量・・・・・ダメです。
更に用量アップ!!
おっ!!!
効いていそうです、が、いまいち…
この薬はどうか???
なんかいい感じ!今までとは明らかに違います
飼い主さんも違いを実感!!!!(だいぶ笑顔です)
残念ながら完全にシャットアウトとはいきませんが、ダーダー漏れていた時と比べればものすごく少量です。
こういった尿漏れには、外科的なアプローチも存在しますが、かえって出なくなってしまうなんてことも。
また、医学領域で行われている人工尿道括約筋(インプラント)のようなものも動物用に開発されており、
今後の検討課題となりそうです。
今回のMちゃん。現在は飼い主さんと話し合いの結果、外科的な治療は考えていません。
今後は、もう少し違う薬も併用しながら経過観察をしたいと思います。