高齢ネコの尿管結石 慢性腎不全 手術(SUBシステム)
今回はちょっと長い話になります。
ご紹介する症例は、13歳になるネコのNちゃんです。
ある日、私が駆け出しの頃からお世話になっている横浜の先生から電話をいただきました。
「ウチで診ている子なんだけど、どうも尿管結石なんだよ!ちょっと先生のところで診てくれない?」
「わかりました!!しっかりやらせていただきます」と返事し簡単に経過を伺い電話を切りました。
その翌日、飼い主さんとNちゃんが来院され、詳しい話を聞かせていただくと。
以前から慢性腎臓病(慢性腎不全)の診断を受けており治療中。
2日前に突然具合が悪くなり夜間病院を受診すると、尿管結石による尿管閉塞(水腎症)を指摘されたそうです。
早速、血液検査・レントゲン・エコー検査などを行うと
確かに左右尿管と腎臓内に結石がみとめられ、
左の腎臓は腎盂の軽度拡張(おしっこが流れづらい)が起きていました。
更に詳しい検査をすると、右の腎臓は既に機能しておらず左の腎臓1個でがんばっているようです。
状態はあまり良くないですし、遠方からの来院ということもあって、とにかく入院となりました。。。
初日からしっかり点滴して経過を見ていくと、結石は詰まったままですがおしっこは流れているようです。
数日後には腎盂の拡張も治まってきて、Nちゃんもだいぶ食欲もでて元気になってきました。
結石はあってもおしっこはちゃんと流れているのですから、まずは退院。
1週間後の再診をお約束して元気に帰っていきました。
それから1週間後・・・・「退院後すごく良かったのですが、おとといから元気ないんです」
検査結果は・・・
詰まってます、以前にも増して水腎症です。腎臓の数値もずいぶんと悪化して
緊急の処置として腎瘻チューブの設置をご提案しました。
もちろん全身麻酔下で行う処置(手術)となりますので、それなりのリスクが伴いますが。
飼い主さんも諦めたくないとのこと。
出来るだけ短時間の麻酔で終われるように勤めます。
その後待つこと4日、腎臓の数値は下がったとはいえまだまだ高値、しかし当のNちゃんはすこぶるご機嫌。
これなら次のステップに進んでも期待が持てそうです。
そして飼い主さんと話し合い。
このまま永久的に腎瘻チューブを付けていることは現実的ではありませんので
それに変わるインプラントを提案させていただきました。
「SUBシステム」アメリカ人が考えたインプラントデバイスシステムです。
以前から用意はしていたのですが、適応症例に悩んでいました。
が・・・
今回のNちゃんの場合は、
高齢であること・再発リスクは高いのですが尿管ステントを入れるには尿管が細い・
腎不全が既に存在し短時間の手術が望まれることなどの理由で選択しました。
尿管ステントと同様にまだまだ歴史の浅い手術方法ですので、
各施設で行っている症例の経過もみてみないと何が正しいのか何とも言えません。
ステントにしてもSUBにしても入れずに済むのなら極力入れない方法を選択することが
結局は一番いいと思っていますが、状況に合わせて柔軟に対応するしかありません。
手術自体は無事に終了。術後の経過も良く、Nちゃん復活です
今後も慢性腎不全の治療とデバイスの経過観察は継続ですが、無事に退院。
飼い主さんもホッとしたようで笑顔が戻りました。
その後の定期検診では、さらに腎臓の数値が下がり。
順調です。
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