猫 おしっこが出ない 膀胱結石 膀胱アトニー(膀胱弛緩)
最近は、尿管閉塞の話ばかりですが。
今回は、オーソドックスな?膀胱結石による尿道閉塞から併発した病気の話です。
ある日、飼い主さんが猫のRちゃんを連れて来院されました。
「かかりつけの先生に、先生のところを紹介されて連れてきたんですけど」
「???」
経緯を詳しくお聞きすると、どうやら後輩の病院にかかっている様で。
「おしっこが出ない」とのこと。
それはやっぱり、うちに来ますよね。
ってな感じで、後輩に連絡し飼い主さんの情報もきちんと得られ、早速診察。

レントゲンでも、膀胱パンパン。
膀胱内に無数にある、細かな結石が尿道にバッチリ詰まっています。
これじゃあ、おしっこも出ませんので、尿道内にカテーテルを挿入し開通。
おしっこを抜いて、膀胱内も洗浄してできる限り結石を回収。
それでもまだ詰まるので、手術により膀胱内の結石を取り除くことに。
手術自体は、いつもの通り行ったのですが。
今回のRちゃん、膀胱のコンディションがものすごく悪い。
それは、乾燥したのし餅の様に硬く、ちゃんと収縮してくれません。
「これは、参ったな・・・」
とにかく手術の目的は結石の摘出ですので、素早く終わって無事に覚醒。
その後経過を見てみたのですが・・・
自分で言うのもなんですが、あんなに完璧に取り残さず摘出した結石が、4日後には再発。
しかし、尿道に詰まる様子は、なし。
でも、排尿困難。
何度か、尿道造影もしてみるものの、詰まっている様子もなく。
もちろんカテーテルもスムースに挿入可能。
「こうなると、あの膀胱が原因だな」ってことになり。
再度膀胱造影すると。
縮まりません。膀胱はベッチャーっと形を残したまま。

これ、膀胱アトニーです。
膀胱が弛緩してしまい、収縮する力を有していません。
こうなると、尿道は開通していてもおしっこは、容量オーバーで押し出される様に出るのみ。
しまいには、Rちゃんもおしっこするのを諦めてしまう様に。
今度は、アトニーの治療です。
アトニーの治療は、まずは1週間を目安に膀胱を収縮させたままにしておくことが有効です。
なので、カテーテルを挿入しっぱなしで常にポタポタ。
入院。お尻の周りは、おしっこでべちゃべちゃ。(気持ち悪いでしょうが仕方がありません)
飼い主さんには「とにかくこれで様子を見ましょう!」
と言って、預かった翌日。
カテーテル抜けてます( ; ; )
カラーもして、カテーテルも短くして(いつもならこれでバッチリうまくいくのに)
じゃあ今度は、カテーテル入れて飼い主さんの自宅で管理。
やっぱり抜いちゃいます(T ^ T)
飼い主さん曰く、Rちゃん、前足使って器用にカテーテルの先端を押し付けて自分で抜いちゃってます。
その後何度かこのターンを繰り返し。
飼い主さんも私もだいぶ疲れ果てたその時。
「先生、オムツってどうなんでしょう?」と飼い主さんからの提案。
「えー!オムツですか?!そりゃあ着けててくれるんならいいでしょうけど、カテーテルさえも気にするのに・・・」
「でも、やってみましょう!とにかくなんでもやってみましょう」
っと言うことで、カラーしてカテーテル入れてオムツして自宅で管理。
するとどうでしょう!!!(ビフォーアフターみたいですが^^;)
「先生!!!オムツいいみたい!!!全然問題ない!!!!」
「ほんとですか!?いいならそのままいきましょう!!」
飼い主さんと2人で大興奮。
カテーテルは気になるのに、オムツは大丈夫。
Rちゃんどんな神経してるのか?
「普通オムツの方が気になるだろ」ってスタッフとも大盛り上がり。
とにかく、オムツ作戦が功を奏し、カテーテル生活も1週間経過。
併用していた膀胱を収縮させる内服薬と結石を溶かす食事とで、自力で排尿できる様になりました。
その後も、内服薬を減薬して経過観察中ですが。排尿はしっかりと1日2回ペース。
毎月来る飼い主さんの顔も笑顔。
おしっこが出る様になったRちゃんも病院嫌そうですが、心なしか笑顔。

よかったです。
長いこと獣医師やってますが、動物の気持ちって本当にわからないものです。