ネコの慢性腎障害(慢性腎不全)の治療薬
最近、ネコの飼い主さんとよく話すこの話題。
特にウチの病院は腎不全を扱っている件数も多いので・・・
皆さん気になってます。
「先生、あの記事見ました?!!」
「うちの子も長生きできるかしら?!」
「いつ頃薬がでるんでしょうかね?」
などなど
数ヶ月前に発表された東京大学による研究がそれです。
(http://www.nikkei.com/article/DGXLZO08431130W6A011C1TJM000/)
ネコの慢性腎障害(慢性腎不全)の多くは間質性腎炎であることは以前から分かっていたことですが、
その原因については不明でした。
現在まで「ネコは腎不全になる生き物なんです」としか言いようがなかったのですが、
東京大学の研究で原因が解明されてきました。
今後数年かけて研究が進み、実用化されることを期待します。
それとは別にこの4月に販売予定で、動物用薬として認可された「ラプロス」という薬。
東レさんが開発しました。
(http://www.nikkei.com/article/DGXLRSP434073_T20C17A1000000/)
この薬の主成分である「ベラプロストナトリウム」は
もともと医学領域で慢性動脈閉塞症や原発肺高血圧症の治療薬として使用されています。
獣医学領域でも、循環器の分野でこの薬を使用した発表がみられ、
今回の研究で、ネコの慢性腎障害(慢性腎不全)の進行を抑制させる効果が分かったようです。
ネコの慢性腎障害(慢性腎不全)における治療の選択肢になることは間違いありませんし、
もちろん当院でも使ってみようと思いますが。
副作用や効果、本当の投与量などの検討は、
臨床の現場で数ヶ月から数年間経過してみないと分からないと思います。
さらに細かな話をすれば・・・
この薬だけ飲めば良いわけでもありません。
今までのような維持療法も行いつつの、もう一つの選択肢です。
腎障害は、間質性腎炎に限ったことではありません。
その他にも腎炎が存在します。
このような薬が出ると、「BUN,Creが高い症例には何でもかんでも飲ませる」なんて風潮が・・・
いうまでもなく、ちゃんと診断してこその治療薬です。
まあ、とにかく病気が解明されることは良いことです。
私が診ているネコちゃん達には、1日でも長く生きてくれることを目指していますので、
このような薬が出てくれることは喜ばしい限りですね。