口腔内腫瘍 悪性メラノーマ 上顎部分切除(手術)
ワンちゃんの口の中、特に歯肉などに腫瘍ができることがあります。
歯周炎などの慢性炎症から発生するエプリスと言った良性腫瘍もありますが、
たちの悪い悪性腫瘍も存在します。
「悪性メラノーマ/悪性黒色種」
これ、とんでもなく手強い腫瘍です。
転移性も早く、局所の増大傾向も早く・・・
昔より成績は上がっていますが、
「どうにか1年もたせる」そう言ったレベルの悪性腫瘍です。
今回は14歳になるダックスのMちゃん。
ある日の診察で、「この前から歯肉に膨らみがあるんです」と飼い主さん。
「えッ」悪い予感を抱えながら唇をめくってみると・・・ありました。
まだ1cmくらいの大きさですがしっかりとした腫瘤が存在します。
う~~ん、見た目からしてメラノーマ・・・
迷っていてもどうしようもないので、
まずは針生検(最小限の刺激で診断できればベストです)・・・細胞が上手く採れません
仕方がない・・・端っこをちょんと切って確定診断のために病理検査へ。
っとその前に、ペタペタとスタンプ。
染色をしてみると「やっぱり」
細胞は比較的おとなしい顔つきですが、メラノーマが強く疑われます。
その後の病理検査結果でも悪性メラノーマと診断されました。
そうと分かれば、
まずはMちゃんの体をくまなく検査します。
幸い、明らかな転移の兆候は診られません。
全身状態も良好。(基礎疾患はありません)
肝心の悪性メラノーマもそれほど広がっていません。(外側の歯肉に限局しています)
いけそうです
「上顎部分切除術」
腫瘍とその周囲の歯肉を、その土台のあごの骨ごと出来る限り摘出します。
局所浸潤も非常比強いこの腫瘍。
腫瘍をかっさらう様に摘出してもあっという間に再発します。
しかも腫瘍に刺激を加えた分、再発の仕方も最悪っといったことになりかねません。
状況からこうした手術法を選択するしかない時もありますが。
「1発でいけるところまでガッツリ」
悪性腫瘍と戦うにはこの方法が一番です。
飼い主さんも即決、手術開始です。
この部分は鼻腔に近くないので、出血のリスクも少ないと思われます。
とは言え、骨ごとなので少し時間がかかります。
そんなこんなですが、手術は無事終了。
術後はしっかり痛みをとってあげてケアします。
術後のMちゃんです。
ちょっと、唇が吊れましたが毛が生えれば目立たないと思いますし、そのうちなじんでくるでしょう。
術後すぐに食欲もでて、経過良好。
今回はかなり根治を意識して行った治療ですが・・・これで終われる腫瘍ではありません。
今後は再発予防のために抗がん剤の投与も検討します。
実際には、完璧にやっても再発の可能性あります。。。それほど悪い相手です。
口腔内の悪性メラノーマ。
外科的なアプローチが可能であればまずは切除がいいと思います。
その後、化学療法や放射線治療を併用します。
獣医領域でも放射線治療がレベルアップしたため昔よりも効果が期待できますが、絶対ではありません。
私たちも日々の診察でなるべくいろいろなところを診ようと心がけていますが、正直限界があります。
口の中に限ったことではありませんが、
「日頃からワンちゃんネコちゃんを良く観察し触って小さいうちに発見してもらう」
飼い主さんからの申告、それしかありません。
「こんなこと聞いちゃ迷惑かしら」なんて思わずに!!
何でも聞いてください、答えられないことは勉強します