猫の腸炎
「猫が年をとると慢性腎不全になる」 猫を飼っていると、みなさん一度は耳にしたこともあるかと思います。
それとは別に、昔から腎不全ほどの確率ではないですが、「膵炎・胆管肝炎・腸炎」も年をとった猫がかかりやすい病気とされています。(単独でももちろん、2つが併発している場合もあります。)
そのなかでも、今日は腸炎の話を2症例。
1症例目は、17歳になるアメショーのSちゃん
当院で診るまで、数ヶ月間食欲不振と間欠的な嘔吐を訴え,病院に行くもなかなか治らず。。。
飼い主さんの献身的な看護やこれまでの治療のお話を聞かせていただき、現状把握のため検査を行うと、レントゲンにて明らかに腸がおかしいことに目がいきます。
そこで飼い主さんに、
「これ、腸自体の問題だと思うのですが、試しにこのご飯(処方食)を食べてステロイドの投与を行ってみませんか?」
ここまでの経過も長いので入院させて集中的に治療すること数日、以前がうそのように食べるようになりました。
さらに治療継続すること7カ月、元気も食欲もあり(もちろん嘔吐はありません)、もともと腎不全もあったのでそちらの治療も行いながら・・・
現在ではステロイドも減薬できて、飼い主さんにも笑顔がもどっています。
Sちゃん、処方食好き嫌い言わずに、ちゃんと食べてね!
2症例目は、10歳になる黒猫のMちゃん
毎年冬に行っている猫の健康診断キャンペーンでのお話です。
一般的な血液検査と尿検査で、腎不全の早期発見を目的に行っている検診ですが、腎不全の徴候は見られないものの尿検査にて引っ掛かることがあったので、除外診断もかねて超音波検査とレントゲン撮影をしました。尿での異常は、ある種の問題をお話し経過観察とさせていただきましたが、どうも、腸がいやらしい感じです。
飼い主さんとお話をすると、「1カ月前から、軟便なんです。以前は良いのが出てたのに、気になってたんです。」とのこと。
「ですよねぇ、こちらとしても腸がものすごく気になるんです。腸自体の問題の可能性がありますので、まずはこの処方食、食べてみてください。改善しないようなら、ステロイドを試します。」
最初に処方したご飯は、お気に召さなかったようで、違うものを用意しました。するとこちらはお口にあったようで、喜んで食べはじめそれから数日、以前のような良い便が出ました。飼い主さんも大満足。
この病気、きれいさっぱり治ってしまうわけではありません、付き合っていく病気です。
今回ご紹介した子達は、うまくいっていますが、中には腸のリンパ腫や腺癌などが原因の場合も経験します(そのような病気の多く子は、おなかの中にしこりを触知します)。
そんなことも絡んでくる病気なので、開腹にて腸組織を採って検査することで、確定診断を行います。しかし、しこりも触らないのに最初からそんな検査なかなか難しいので、まず試してみて考えるということで「あり」かと思います。
猫の慢性軟便・嘔吐・・・こんな病気かもしれません。気になる方は、一度ご相談ください。