猫 免疫介在性血液疾患 エバンス症候群
エバンス症候群??って、聞き慣れないと思いますので、簡単に説明します。
これは血液の病気です。自己の免疫機能が、間違って赤血球や血小板を攻撃してしまい、壊してしまうことでそれらが減少してしまします。
赤血球の場合は、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)。進行して貧血になります。
血小板の場合は、免疫介在性血小板減少症(IMT)。進行すると出血が止まらなくなります。
これらの病気は、単独で起こすことが一般的ですが、両方が同時に発症することを、エバンス症候群と言います。もちろん単独で発症しても危機的な状態になる病気ですので、両方となればより重篤な状態ということになります。詳しくは、調べてみてください。
今回の症例は、古くからお付き合いのある先生からの紹介でした。
「先生、こんな症例いるんだけど。お願いしてもいいかなぁ」
「もちろん、私でよければ」
便利な世の中になったもので、LINEで送られてきた血液検査データを見てみると・・・
「やば・・・」
赤血球と血小板がほぼ無いに等しい・・・
程なくして、来院したMちゃん。6歳。
とても立派なノルウェージャン。
今の状況を伺うと、「とりあえずはなんとなく食べてるんです」って飼い主さん。
「この状況で食べられているんですね!」・・・生命力が強い子です。
話をしながら、血液検査のための採血をして、触診してみると
紹介元の先生が言ってた通り、「やっぱり、腹水ありますね?!」

確認のため、レントゲンとエコー検査。しっかりと腹水。
血液検査結果は、赤血球の減少(ど貧血)HT15.5%と血小板の減少 9000(出血傾向にならずよく保ってる)。
鑑別診断のために、血液凝固系の詳しい検査もして、炎症マーカーも外注に。
採取した腹水は変性漏出液・・・一番微妙。
猫でエバンス症候群??腹水????どうリンクしてるの?
腫瘍でもあって、DIC??であればこんなに食べたりしていないはず・・・あれやこれや・・・
考えても答えは出ないので、とにかく、まずはやってみよう的に治療開始。
骨髄検査も考慮されますが、何しろ貧血なので麻酔がかけれない。
骨髄で作られてなければ、実際には打つ手が無いに等しいと思われるので、
骨髄では作っていることを信じ、作られて末梢血中に出てきたところで免疫攻撃されて減少。
そのストーリーでしか、治療は無理。獣医療の限界。
幸い血液凝固系の問題ではないようですので、免疫抑制やってみましょう。
最初は、免疫抑制量(高用量)のステロイドを投与。
数日して、「お!!なんとなく減少は止まってる」
赤血球はHT18.2%、血小板は8000。
これならいけるのか?ってことで、免疫抑制剤も追加。今のところ輸血はしなくても大丈夫そう。
さらに数日・・・パッとしない。もちろん腹水も。(T . T)
HT16.5%、血小板32000
これじゃあダメだということで、免疫抑制剤の種類を変更。
猫に使える免疫抑制剤・・・悩みに悩んで、副作用のことなども色々調べながら・・・まずはこれかな?
すると、どうでしょう!(テレビのナレーションみたいですが)反応いいんじゃない!!!
HT18%、血小板96000 なんか戻ってきている気がする!!
その後も貧血は徐々に回復、血小板も一緒に回復。
使用している薬の副反応からすると、なんとなく白血球も少ない感じがするけど、これはこれで危険域ではないので保留。
血球3系統?全部ダメなのか? そんな状態・・・こわ。
「ここは、見て見ぬふり的な感じで、今の治療を信じて進むしかない。」半分お祈り。
そんなこちらの気持ちはさておき、当のMちゃんは、回復と共に食欲も安定、本当に強い子で助かる。
結局1ヶ月半。徹底的に免疫抑制。なんとか安全域まで回復。
それとともに自然に腹水も消失(誰か、この現象を教えてください)
今後は、これらの薬剤を減薬して経過観察。また下がっちゃうのか?
先日出席した獣医師会学術大会で、猫の免疫介在性溶血性貧血に対しての脾臓摘出の効果を研究した発表がありました。なんてタイムリーと思いながら聞き入り。演者の先生の指導医は、古くから知っている先生なのでこの際聞いてみようかな?なんて思ったのですが、手元にデータもないので断念(悲し)。また今度。
まだまだ安心とはいきませんが、とにかく薬の副作用もなくここまで来れたので、よかった^_^
これまでの経験で、単独での発症においても亡くなってしまう子もいて。やることを徹底的にやって、あとは動物の反応待ち的な病気なので、リスクも高い。それが、エバンス症候群となれば・・・
治療に関してあれやこれや考える、それが経験となり次にも活かせます。
いい勉強になりました。
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