犬の会陰ヘルニア 手術 便が出づらい(便が出ない)
今回の症例は、ほかの病院の先生からのご依頼でした。
ミニチュアダックスの男の子、排便困難を訴え来院されたようです。
診察にて、会陰ヘルニアであることが分かりました。
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写真:ご依頼のあった先生の病院で撮ったレントゲンです。
肛門の部分に、会陰ヘルニアにより排泄が困難となった大きな便の塊が観察されています。
1年ほど前に前立腺の問題があり去勢手術を行ったらしいのですが、
会陰ヘルニアは進行し症状を訴えるようになってしまったようです。
今回の症例では、ヘルニア部分の修復にはいつものように医療用メッシュ(ポリプロピレンメッシュ)を使用。
術前の検査にて、結腸もだいぶ緩んでおり膀胱も少し後方へ変位していましたので
先方の先生とも相談の結果、開腹して結腸固定と前立腺固定を一緒に行いました。
お腹も開けて、お尻もやってなのでかなり時間はかかりますが、手術は無事に終了。
あとは再発がないか経過観察するのみです。
(これで大丈夫と自身をもって終わるのですが、どんな手術も術後はドキドキします。)
今回の症例では術後3~4日をピークに患部はかなり腫れましたが、消炎剤を使用するなどの処置で抜糸のときには排便も良好。
しばらくは、縫った部分は多少いびつな感じになっていますが時間が経てばちゃんとなじんでくると思います。
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写真:抜糸の時の患部(お尻)の様子です。少し痛々しいですがご了承下さい。
オスのダックスには特に多い病気です。
便が出づらい・・・お困りの方ご相談ください。
ーおまけー
会陰ヘルニアの手術方法には、
生体の素材(筋肉や膜)を使う方法や、同じメッシュを使う方法でも異なる術式がいくつかあります。
どのような方法でも一発で治せて用は再発しなければ良いので、どれが一番いいなんてこともないのですが。
各大学病院の外科の先生方はそれぞれ自信のある手技を考案し実績を上げていらっしゃり、それらを学ぼうとするそれぞれの開業医がこれだと思うものを採用して手術に望んでいるというのが現状です。
私の場合は、大学附属動物病院の研修を通じて間近で学んでいる方法を採用しています。
人工物を使用する点ではデメリットもありますが、ただ単に片側のみもしくは両側のヘルニア孔(穴)を塞ぐという方法とは基本的なコンセプトが違うため再発率は低い術式と理解しています。
もちろん最初の手術で治ってしまうのが一番良いに決まっていますが、
方法は決して1つではないので、再発したからもう治らないと言う訳でもありません。
手術方法や内容をよく理解していただいた上で手術を決断されるのが良いと思います。
私の獣医人生もまだまだこれから、新たな優れた術式が考案されるかもしれません。
そんな時は、頭をやわらかくして術式の良い点悪い点を勉強・理解した上で望みたい思います。