犬のアレルギー性皮膚炎 その2
アレルギー性皮膚炎の診断をした実際の症例をご紹介します。
T.プードル 3歳 避妊メス
2011年11月頃から、背中・前足の屈曲部・あごの下に脱毛を伴う痒みを訴えて来院されました。
各感染性皮膚炎を除外したうえで、ステロイドを短期間試験的に投与。
すると、痒みはピタリと止まります。
良好なので、しばらく止めてみます。
すると、それほど期間が空かないうちに、また同じ部位に同じような痒みが出てきます。
実はこれ、出ている部位・ステロイドへの反応から、アレルギーの疑いがあります。
そこで今度は、アレルギーがアトピー性なのか食事性なのか、プログラムされたステロイド投与を行い、ざっくりですが探ってみます。(これには、やり方があります。)
すると、「どうも主たる痒みは、食物アレルギーが疑わしい」、と予想することができました。
そこで、飼い主さんへご相談、「アレルギーの検査してみませんか?」
リンパ球の反応結果の一部がこれです。
トウモロコシ以外の項目で、反応の数値が出ており、牛乳は全然ダメです
結果から「この子は、食物アレルギーです」と診断できます。(予想は当たってました)
しかしここで、終われません。
この子の場合幸い、この後の検査で反応しない処方食が見つかりましたので、それを食べてもらってます。ちなみに、基本的におやつなしです!
これで、食事に対する痒みはほぼ0になりました。
もちろん、ステロイドは必要ありませんし、現在、痒みも訴えていません。
実はこの子、軽度のアトピー性皮膚炎も、検査の結果併発していることが分かりましたので、暖かくなったら、そちらのコントロールをしていきます。(おそらく、経験的にステロイドは必要ないと思っています。)最初の1年は、やるべきことをきっちりやって、アレルギーの痒みをシャットアウトします。その結果をうけて、2年目またどうするか決めていきます。
花粉症でお困りの方はよくご存じでしょう、アレルギーは付き合っていく病気です。
しかも、現在アレルギーを持っている子は、アレルギー体質ということですので、今は大丈夫な食事でも今後ダメになることも十分考えられます。アトピーに関しても同様です。
犬の寿命が15年とすると、この子の場合今後10年以上コントロールを続けないといけません。したがって、副作用のことなどを考えると極力ステロイドの投与は避けたいものです。
適切な検査をして、きちんと結果を理解し、治療をすることで、ステロイドの量を減らせる可能性があります。
アレルギー以外の皮膚の問題が絡んでると今回のように簡単にはいきませんが、検査結果から今出ているのは何の痒みなのかを分析することで、漠然としていた痒みの深い森に一筋の光が見えてくる、このようなことをよく経験します。