犬の膀胱内腫瘤あれこれ 良性ポリープと移行上皮癌
いよいよ今年も終わりに近づいていますが・・・
年末感は例年どうり全く感じることもなく、年賀状も終わらず。
とにかく、無事に今年が終わることを願うばかり。
皆さんは、年越し準備進んでいるのでしょうか?
そんなことを願い、グダグダしていてもやってくるのが病気の子たち。
今回は、このところ重なっている、犬の膀胱内腫瘤のお話です。
膀胱にできる癌(腫瘍)といえば、移行上皮癌が最もポピュラー。
非常に悪性度が高く、転移性・浸潤性が高い癌として有名です。
一方、癌とは違い慢性膀胱炎などが原因でできる、良性の腫瘤(ポリープ)もあります。
症状としてはどちらも似ていて、血尿や頻尿といった膀胱炎症状が一般的。
多くは、エコー検査にて膀胱内に腫瘤が観察されます。
細かい呼び名は、ともかくとして、
まずはその腫瘤が何者なのか?
診断するためには、カテーテル吸引生検による細胞診を行います。
膀胱内病変の位置に、尿道より挿入したカテーテルの先端をキープ、あとは注射器で吸って陰圧をかけます。
その後、取れてきた細胞の異型性などを観察(多くは、病理専門医に診断をゆだねます)。
癌が疑わしいのか?それほど悪そうじゃないのか?
確定診断は、あくまでも組織検査となるのでこの時点では、「疑わしい」止まりとなります。
膀胱鏡(内視鏡)があれば、組織を採取可能ですが・・・うちの病院にはありません(欲しい・・・)
また現在は、そのような細胞診と合わせて、細胞のBRAF遺伝子変異の有無を検査することで、
完璧ではないもののかなりの確率で癌が検出できるようになりました。
以上、ざっくりとした感じの説明ですが、このような間接的な検査の結果を踏まえて、
外科的に膀胱内の腫瘤を切除?(膀胱を残せる場合と残せない場合があります)
内科的に消炎剤で経過観察?(癌の場合でも、状況や希望により内服で治療することもあります)
飼い主さんと治療方法の話し合いとなります。
抗がん剤投与では、なかなか効果が見られない移行上皮癌。
未だ治験の段階かと思いますが、分子標的薬の投与で少し?効果があるとか、ないとか?
何れにしても、膀胱内に腫瘤性病変が見つかった場合には、まずは何者か?を検査。
その後、治療計画を検討。という順番になります。
高齢だったこの子は、膀胱頭側部に腫瘤性病変を発見、炎症性(良性)の変化。
消炎剤の投与により消失。
この子の場合は、膀胱三角部を含む数カ所に腫瘤性病変を発見。
三角部腫瘤は癌も疑いたくなりますが、細胞診・BRAF共に良性を示唆。
消炎剤と慢性膀胱炎を治すための手術により消失。
この子の場合は、移行上皮癌(膀胱から尿道にかけて癌が浸潤しています)。
飼い主さんも膀胱~尿道全摘のような手術は望まれなかったため、内科治療を行なっています。
通常すぐに排尿困難などの症状が出てきますが、排尿・腎臓良好で頑張って1年以上生きてくれています。
この子は、健康診断でたまたま見つけました。
位置からすると尿管開口部の可能性もあるため、経過観察1ヶ月後の再検査で増大傾向なら診断に移ります。
膀胱内腫瘤、あれこれ。
診断してからが勝負となります。
今年も色々な子を診させてもらいました、多くの先生からのご紹介もあり大変勉強になりました。
年が明けてやること満載のような雰囲気になっていますが、今夜は病院スタッフと忘年会。
日頃のみんなの頑張りを労いたいと思います。
みなさま良いお年をお迎えください。
年賀状は、明日かなー????