犬の発作性ジスキネジア
「発作性ジスキネジア」
全く聞いたことのない病名
脳神経科の先生方は当たり前のように知っている病気なのかもしれませんが、
我々のような一般開業医には、馴染みのない病気。
人においては運動誘発性のジスキネジアや遺伝的なジストニアといった病気がそれに類似するのだと思います。
何れにしても、もう長いこと獣医師として仕事をしていますが聞いたことも見たこともない。
定期的に続いている、脳神経科の専門医による勉強会。
こんな病気もあるんですよ、みたいな雰囲気で、症例の動画も見せてくれたりして。
毎回毎回、勉強になります。
その勉強会で話題となったのが、「発作性ジスキネジア」
ミオクローヌス(不随意の運動)を含む運動異常が身体に起きてしまいます。
わかりやすく言うと、
全体的な変な動きと体の一部分が勝手に動いちゃう。
日本では、ジャックラッセルに多いとか。
それを聞いた瞬間に、以前飼い主さんに撮影してもらった動画を引っ張り出し。
「もしかして、これって。そのジスキネジアですか?」って
その子の場合は、後ろ足にのみ変化が見られ、散歩中にスキップを繰り返します。
自分自身で触診しても、整形外科の専門医に動画をみせても、ずっと答えが分からなかった症状が、
「おそらくその可能性高いと思います」
なんて、素晴らしい!!!
「でもこの子の場合は、後ろ足だけなので困っていなければこのままでもいいかもしれません」
喉につっかえていたのもが取れた感覚。
「それにしても、こんな病気もあるんですね」なんて言いながらその日の勉強会は終了。
日々の診察をこなし、頭の隅にあったその病名も忘れかけた頃。
「勉強すると来院するシステム」がまた発動されました。
相談に来たのは、子犬の頃からみている4歳になるトイプードルのSちゃん。
「この頃、こんな感じになっちゃうんです」と見せられた動画は、
部分的な痙攣なのか?全身的なミオクローヌス発作なのか?
明らかにおかしいし、Sちゃんもこれでは大変。治療が必要です。
ただし、ここからが我々獣医師の治療の難しいところ。
「犬は喋ってくれません」
人であれば、直接本人と問診というもので診察が始まりますから、
その発作がどのような感覚なのか?なんてこともスムースに聞くことができます。
が、そんなこと全く不可能なので、確率の高い病気の治療を試しにやってみて反応をみる(診断的治療)ことにします。
今回ののSちゃんの場合は、確率的に高いのは症候性てんかん(部分発作)。
まずは、抗てんかん薬に反応するのか?を試してみました。
すると、少し反応?でもまだ発作はみられる。
正直、この辺が一番困った反応。
仕方がないので、もう少し同じ薬で試してみます。
「やっぱりそんなに効果はないみたいです」って飼い主さんの判断。
改めて動画を見せてもらい、薬への反応を共有します。
「じゃあ、この動画メールに送ってもらえますか?専門医にも意見を聞きます」
っと言って、早速もらった動画を専門医に転送。
その答えは
「先日話した、ジスキネジアだと思います」とのこと!!!
「でた!勉強したらくるシステム!!」(心の叫び)
「確認のために以下のことを聞いてください」
「それが合っていたら、試験的に教えた薬を投与して反応を見てください」
的確な返答が返って来ます。
そして、飼い主さんにその旨を伝え。
使う薬自体も副作用はほとんどないようなものなので、早速投与。
開始すること1週間。
「先生、いいみたいです!発作なくなってきました!!」
飼い主さんだいぶ笑顔。
当たり前です、あんなになっていたのが驚くほど抑えられています。
治療した私もびっくり。(それも当たり前、初めての経験なので)
「なんか良さそうなので、このままいってみましょう」
といって処方し、再診を行う頃には、それはそれはしっかりと治り。
相談した専門医にも治療経過を報告。
「いいですね!綺麗に反応している症例で素晴らしい!!」
なんか、こっちまで褒められているようでちょっと照れます。
(そんなおじさんの照れなんて置いておいて)
投薬をすること数ヶ月、徐々に減薬にも成功して。
今もなお、「綺麗に反応して、抑えることに成功しています」(^ ^)
言葉の話せない動物たちへの治療の難しさ。
学び続けることの大切さ。
ここまでやってきても、まだまだ知らないこともある。
ずっと続くんでしょうね ^^;